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ブリオッシュの種類やバリエーションと作り方のポイント

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ブリオッシュ

フランス発祥のリッチなブリオッシュ

今回は、フランスを代表するリッチなパンであるブリオッシュを取り上げます。

私がフランス人オーナーシェフのパン屋さんで体験したブリオッシュの作り方のコツや、ブリオッシュの仲間で、初めて食べた時に酩酊した思い出のあるババ・オ・ロムなどのお菓子も紹介していきます。

 

ブリオッシュの歴史やレシピの特徴

最もリッチなパンとも称されるブリオッシュの特徴は、たっぷりのバターと卵の風味、ふんわり口どけのいいソフトな食感です。

ブリオッシュの歴史を紐解くと、もともとは、フランスのお祝い・お祭りなど特別な日に食べるお菓子でした。諸説ありますが、「ブリオッシュ」という名称は、フランスのブリー地方が由来ともいわれています。

ブリオッシュのレシピは、お菓子作りの基礎となる4つの材料「砂糖」「バター」「卵」「小麦粉」がベースになっていて、今でもフランス各地に伝統的なブリオッシュのレシピが残されています。

例えば、粉に対してバターと卵を50〜70%配合し、水を一切加えず卵・牛乳・生クリームの水分のみで作る超リッチなレシピや、起源がお菓子ということもあり、バターと砂糖をクリーミングするパウンドケーキのような作り方をするレシピもあります。

私が働いていたフランス人オーナーシェフのパン屋さんでは、ルヴァンリキッド(液状発酵種)、オレンジフラワーウォーターを使った伝統的なレシピでブリオッシュを作っていました。

 

ブリオッシュ生地の作り方のコツ

【仕込み】

ブリオッシュのように砂糖や油脂を多く練り込む生地は、グルテンが繋がるのに時間がかかるためミキシングが長めになります。

ただし、必要以上に長くて強めのミキシングをすると、生地の酸化が進み過ぎて風味が飛んだり、こね上げ温度が上がり過ぎてバターが溶けだし、口どけの悪いブリオッシュになってしまいます。

こうした品質劣化を避けるために、季節や室温、レシピに応じて下記のような手法を組み合わせることで、最適な捏ね上げ温度(目安は22〜24℃)に近づける事ができます。

  • 作業場の温度(目安22℃前後)・湿度を一定に保つ
  • 粉、卵や牛乳など材料を冷やした状態からミキシングする
  • 仕込み水の一部に氷を使用する
  • ミキシング時間短縮のためにオートリーズをとる
  • ミキサーボウルを冷やしながらミキシングする
  • 配合量の多いバターは2〜3回に分けて加える
  • 冷水・冷蔵冷凍耐性の強いパン酵母を使う

冷水・冷蔵冷凍耐性が強くて、ブリオッシュ生地にも最適なパン酵母は、フランスのルサッフル社の「サフ セミドライイーストゴールド」です。解凍無しでそのまま使えて、長期冷凍保管(製造から24ヶ月)できる点も使い勝手が良くてオススメです。

【発酵】

仕込んだブリオッシュ生地の一次発酵は、冷蔵法が主流です。

砂糖や油脂が多いブリオッシュは、常温で分割や成形を行うと生地がベタつきます。生地の低温熟成効果、作業性向上の両面から見ても、ブリオッシュ生地には冷蔵法が一番適していると思います。

仕込んだ生地のこね上げ温度が目標より上がり過ぎた時は、フロアタイムは短めにして、冷凍庫で30分ほど急冷した後に冷蔵庫に移すなど、 生地の状態に合わせて臨機応変に対応します。

【成形・ベンチタイム】

成形工程でも、冷えて適度に締まっている生地の方が扱いやすいです。

冷蔵生地の成形で重要なのは、丸め、包あん、伸しといった手先の技術の前に、生地の締まり具合と緩み具合を見極めることです。

一番成形しやすい状態(復温の目安は生地温17〜20℃)の生地は無理なく伸びて扱いやすいので、表面が張ったバランスの良い形が作りやすくなります。

【ホイロ】

最終発酵(ホイロ)は、油脂の融点を超えない温度帯でとります。基本は、融点マイナス5°c(バターの融点は30℃前後)です。この原則は、クロワッサンなど折り込み生地の最終発酵も同様です。

パンの種類を問わず、美味しいパンを作るためには、重量・時間・温度の3つを管理することが重要です。

 

ブリオッシュの種類・形・名称まとめ

ブリオッシュ・ア・テット

頭のついた「ブリオッシュ・ア・テット」

フランス各地の伝統行事で作られてきたブリオッシュはバリエーションが豊富で、形状や発祥などによって様々な名称が付けられています。代表的なものを下記に紹介します。

ブリオッシュ・ア・テット

最もポピュラーなブリオッシュで、頭のついた小ぶりな形が特徴。バランスよくキレイな形に成形するのが難しい。キレイな形に仕上げるコツは、冷えて適度に締まった生地を手早く成形すること。頭と胴体部を2つのパーツに分割し、バランスを整い易くした成形法もあります。

 

ブリオッシュ・ナンテール

型焼きのブリオッシュ。丸形の生地玉を長方形の型に8個並べた形が一般的。通常のブリオッシュよりもバターを多くしたリッチなレシピもある。日本では、食パン型で作るブリオッシュ食パンや、ちぎりパンなど、名前や形をアレンジしたパンがよく知られている。

 

ブリオッシュ・ヴァンデーヌ

フランスのヴァンデ地方の編みパン。編みパンは、1本編み〜6本編みなど多様なバリエーションがあります。ポピュラーなのは、フランス語で三つ編みを意味する「トレッセ」とよばれる3つ編みパンです。香り付けにオレンジフラワーウォーターを使ったレシピが有名。

 

ブリオッシュ・シュクレ

シュガーバターのトッピングが美味しいブリオッシュ。平たく伸ばした丸型生地の表面にグラニュー糖を散らし、指でピケを打ったくぼみに角切りバターをトッピングして焼き上げます。生地に洋酒漬けのオレンジピールを練り込んだレシピもあります。

 

ブリオッシュ・クーロンヌ

王冠(クーロンヌ)の形をしたブリオッシュで、エンゼルケーキ型で焼き上げます。表面にハサミで切り込みの模様を入れたり、あられ糖や粉糖でトッピングしたレシピもあります。

 

ブリオッシュ・ムースリーヌ

円筒形の型で焼き上げるブリオッシュで、スライスしてサンドイッチ用途にも向いている。ブリオッシュの中で最もバターの配合が多いリッチなレシピもある。ドレスなどに使うムスリンという布が名前の由来とされています。

 

ブリオッシュ・デ・ロワ

ブリオッシュにドライフルーツやナッツを練り込んだものが一般的。祝いの日の伝統菓子として、配合や形は様々なバリエーションがある。フランスボルドー地方の、赤と緑のドレンチェリーをトッピングしたものが有名。ガトー・デ・ロワと呼ばれることもある。

 

ブリオッシュ・スイス

ブリオッシュ生地でカスタードクリームとチョコチップを挟んだヴィエノワズリー。派生品として、クロワッサンなどに使う折り込み生地でカスタードクリームとチョコチップを挟んだ「プリエ・オ・ショコラ」、折り込み生地を帯状にカットし、断面を上向きに並べることで独特の模様と食感を出した「パンスイス」があります。

 

ブリオッシュ・オランデーズ

風車をモチーフにしたブリオッシュ。円形に伸したブリオッシュ生地の上に、卵白・砂糖・アーモンドを使ったマカロン風の生地を塗り、仕上げに2回粉糖をふりかけて焼き上げる。

 

ブリオッシュ・フィユテ

ブリオッシュ生地でバターを包んで折り込むリッチな折り込み生地。フィユテとは、フランス語でパイのこと。折り込み生地で重要なのはバターの温度管理です。バターが可塑性を最大限発揮する温度帯(目安13〜18℃)で作業する事で繊細な層が生まれます。

 

ブリオッシュの仲間のお菓子

クグロフ

アルザス地方の伝統菓子「クグロフ」

ハレの日を祝うお菓子としてのルーツを持つブリオッシュ。

名称は違っても分類すればブリオッシュから派生したバリエーションや仲間に入るヴィエノワズリーが世界各地で作られています。代表的なものをいくつか紹介していきましょう。

ヴィエノワズリーは広義として、バター・卵・砂糖などを使ったリッチなお菓子やパンの総称です。

クグロフ

シンボリックな陶器の型で焼くフランスのアルザス地方の伝統菓子。レーズン、レモンピール、オレンジピールグランマルニエコアントローなど、色々なドライフルーツと洋酒を組み合わせたレシピがある。

 

ババ・オ・ロム

ラム酒シロップに浸したブリオッシュに生クリームをトッピングしたお菓子。固くなったクグロフにラム酒をかけたのが始まりという説もある。ババ・オ・ロムによく似たお菓子の「サバラン」は、浸すお酒をラム酒に限定せず、ブランデー、キルシュ、グランマルニエなども使われます

 

パスティス

オレンジフラワーウォーター、ブランデー、ラム酒、アニス酒などで香りづけしたブリオッシュ。バターと砂糖をクリーミングしたパウンドケーキのような作り方をするレシピが有名。

 

パン・オ・レザン

ブリオッシュ生地で、カスタードクリームとラムレーズンを巻き込んだヴィエノワズリー。同じ名称で、クロワッサンに使う折り込み生地で、カスタードクリームとレーズン巻き込んだバリエーションも人気。

 

トロペジェンヌ

ブリオッシュ生地に洋酒シロップを染み込ませ、カスタードクリーム(クレーム・パティシエール)をはさんだ、フランス版クリームパンのようなお菓子。ガトー・トロペジェンヌ、タルト・トロペジェンヌと呼ばれることもある。

 

日本や世界のブリオッシュの現状

ブリオッシュ生地

バターと卵たっぷりのブリオッシュ生地

近年は、たっぷりのバターと卵を使ったリッチなブリオッシュは、本国フランスでも需要が減ってきています。こうした傾向は、健康指向や環境維持の観点からも、世界的に広がっています。

小麦や乳成分のアレルギー対応、コレステロールオフなどのヘルシー指向、動物性原料を使わないヴィーガン指向など、時代の変化に合わせて、米粉・豆乳・植物性油脂などを使った置き換えレシピも見受けられます。

また、世界的な異常気象や紛争などの影響による、原材料の不作や高騰も大きな問題になっています。

ブリオッシュは、バターが手に入りにくい時代に、オリーブオイルで代用して作られていた過去もあります。今後、バター不足が深刻化し、歴史が繰り返されるかもしれません。

原材料を代用するにしても、バターやオリーブオイルは言うまでもなく、パン・お菓子に関連する全ての材料が高騰している現状なので、根深い問題だと思っています。

 

【日本の進化系ブリオッシュ】

ブリオッシュクリームパン

ブリオッシュ生地のクリームパン

日本のパン屋さんのブリオッシュは、日本人にも親しみやすい呼び名にアレンジされていることが多いです。

例えば、日本でポピュラーな、あんパン・クリームパン・メロンパンは、菓子パン生地で作るのが一般的ですが、リッチなブリオッシュ生地で、あんパン・クリームパン・メロンパンを作って特色を出しているお店もあリます。

ブリオッシュの食感も本国フランスでは、ラテなどに浸して食べる習慣があり、多少パサついていても気にしませんが、日本では、そのまま食べても口溶けのいい、しっとりなめらか食感が好まれます。

スイーツパンとしてブームになった「マリトッツォ」も、クリームとの相性を考え、ふんわり口溶けのいいブリオッシュ生地を使ったものが人気でした。

近年は、よりしっとりなめらかな口溶けを追求して、カボチャのペーストを練り込んだレシピなども見かけます。フランスで誕生したブリオッシュは、日本をはじめ世界各地の食文化の影響を受けながら、今もなお進化を続けています。

 

フィナンシェ、マドレーヌ


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